「真実の話」より「小犬があぶない!」

 偶然、ネットで見かけた映像に釘(くぎ)付けになった。場所は日本から遠く離れたカザフスタンの貯水池(ちょすいち)。カザフスタンはかつてソ連(現ロシア)の一部だったが、1991年にソ連の解体に伴(ともな)い独立している。

 映像には貯水池に落ちて動けない一頭の小犬が映っている。そこへ勇敢な若者が貯水池に降り救助に向かった。水に濡(ぬ)れながら小犬の所までたどり着き犬を抱き抱えた。

 『助かった』とほっとしたのも束(つか)の間、貯水池の坂が急斜面で登ることができない。救出は困難を極(きわ)めた。通りかかった人たちも心配そうに貯水池をのぞき込んでいる。

 そのうち1人、2人と手をつなぎながら坂を下りて行き、5人による人の綱ができた。そして、犬を抱えた若者とつながり、小犬は無事に救助された。若者たちが我(わ)が身の危険を顧(かえり)みず小さな命を救った瞬間、熱いものがこみ上げてきた。

 クロアチアにロシアが侵攻(しんこう)している。逃げ惑う人々や破壊(はかい)されていく建物を映像で見るにつけ胸が痛む。しかし、子どもたちに声を大にして言いたい。世界にはあの犬を救出した若者たちのように思いやりがあり、心優しい人たちがたくさんいることを。