関西の踊る本屋さん
「関西の踊る本屋さん」
「南中ソーラン」と呼ばれる踊りがある。時は、1984年に遡る。日本の最北端、稚内南中学校はヤンチャな生徒たちで荒れに荒れていた。校長は「有り余って暴力に走るエネルギーを、踊りで発散できないか」と思案。そんな中、教師と先生がアップテンポにアレンジした「よさこいソーラン」を考案し、文化活動発表会で演舞し好評を博した。その後も、練習に練習を重ね全国民謡大会に出場、2年目に何とグランプリを獲得。そのことは安達祐美主演で映画化され、全国の教育関係者の間で話題になった。
この映画に感動した大阪の税理士・欠野(かけの)アズ紗さんは、稚内南中学校を訪ねる。「大阪の青少年健全育成の一環のために」と、校長先生に懇願。資金不足で紆余曲折するも、大阪で教師向けの講演会の実施にこぎつけた。聴講した多くの教師らも共感し、「南中ソーラン」は次々と伝播。大阪、兵庫の小学校の運動会の恒例の演目にまでなった。また、毎年、体育の日には大阪城ホールで、関西の幼稚園児から大人までの多くの踊り連が集まって総大会が行われている。
さて、私が役員を務める大阪日販会(現・関西日販会)の総会で、欠野さんに講演をお願いしたのが13年前のこと。話に感動してしまい「私も踊りたい」と手を挙げた。早速、指導を受けて仲間と踊りの「本や連」を作って、出版・書店業界の商談会や総会で披露するべく練習を積み重ねてきた。「連」のメンバーは、日販の新入社員から今年70歳になったわたしたち年代まで20名ほど。私たちは踊りのプロではない。うまくはない。だから、せめて練習に打ち込む。この12年間で、「できないことに挑む」「一生懸命がんばる」ことの大切さを踊りから学んだ。
寄る年波、そしてメンバーの多忙から、今年10月の総会をもってわが「本や連」は休会することにした。でも、きっといつの日か、再び復活する日を密かに祈ってはいる。書店業界は不況と言われて久しい。でも、35年前、北の果て、稚内で誕生した踊りのエネルギーは、脈々と私たち書店員の心の中に生き続いている。
ありがとう、南中ソーラン!!