絵本とお煎餅
「絵本とお煎餅」
コロナで自粛が叫ばれていた最中の出来事だ。書店業界では休業要請に応じる大型店が多かった。だが、うちのような小さなお店は休むわけなにいかなかった。店頭販売はともかく、毎月毎月、配達を待ってくださるお客様がいるからだ。それでも、医院や美容院のお客様から「コロナが落ち着くまで配達をとめてほしい」との連絡が相次いだ。やむを得ないと思いつつも、内心は胸がつぶれそうだった。そんな時である。「絵本セラピストの会」で知り合った神戸の女性からzoomで「絵本の会」のイベントを開催するのだが、そこでとりあげたい絵本の著作権について許可をとってもらえないかと電話で相談された。その作家さんとは親しくさせてもらっていたので、出版社の担当者を介して快諾をいただくことができた。その返事を彼女に伝えると、とても喜んでくれた。そして、こんな申し出をいただいた。「こんな時期なので、少しでも小林さんの役に立ちたいです。イベントで『由美子さんから絵本を買おう!』って呼び掛けていいですか?」と。さらに、「由美子さんと仲良しの手焼き煎餅屋さんのお煎餅と合わせてはどうかしら」。有難い話だが、わざわざ送料まで払って買って下さる方がいるだろうか。迷いつつもお受けした。ところが・・・。間もなく、地元だけでなく遠方からも次々と注文のメールが入った。絵本と煎餅を同梱するので割れないように、さらに送料も割安になるようにと工夫が必要だ。まさしく嬉しい悲鳴。毎日、毎日、梱包作業に追われた。正直なところ、大きな利益にはならない。が、金額ではないのだ。お一人ずつにお礼のお手紙を書いていると、何とも言えない充実感が湧いてきた。毎月おくらせていただいている「いい話の図書館」も、こうした拙文を書かせていただきながら、豊かな気持ちにさせていただいている。情けは人のためならず、という。どんな状況にあっても生きる勇気を与えてもらっていることに改めて感謝する日々であった。