がんばれ!街のちいさな映画館

「がんばれ!街のちいさな映画館」

恥ずかしながら小林書店の日常を撮影したドキュメント映画「まちの本屋」が、全国各地のミニシアターで上映されている。配給会社も広告会社も持たない映画が、これほどまでに多くの人に観ていただけることに、監督もわたしも驚いている。この映画、なんとナレーションがない。ただ淡々と、画面の中でわたしが動いてお客様としゃべっているだけ。「ナレーションをつけると、観ている人を作り手の思いに引っ張ってしまう。観る人それぞれに感じてほしい」という監督の意図だ。
各シアターに、舞台挨拶と称して監督と一緒にトークを行っている。今年の5月から、大阪の「シアターセブン」、神奈川県厚木市の「あつぎのえいがかんkik」i、鹿児島の「ガーデンズシマ」、名古屋の「シネマテーク」、愛知県の「刈谷日劇」と、どこも50席足らずのミニシアターだ。しかもコロナ禍、密を避けて半数ほどの定員にして予防対策や換気に十分配慮しての上映。「観客ゼロ?」という不安のまま幕が上がると、ほとんど定員に達していた。おかげさまとしか言いようがない。
20分。許される場合は50分も監督と掛け合いでオシャベリする。「なぜ監督がこの映画を撮ろうと思ったのか」「なぜ本屋の長女に生まれたわたしが絶対したくないと思っていた本屋を継ぐことになったのか」「なぜ小さな本屋でなぜたくさんの傘を売っているのか」等々、映画では語られていないことを話す。ミニシアターとまちの本屋は似ている。シネコンとは異なり館主が自分の好きな映画を上映することで差別化し、自らの立ち位置を確保しようとがんばっている。ただ、街に映画館を残したいという熱情なのだ。
三代目という40代のオーナーに出会った。祖父が映画館を作ったときは、映画全盛であったろう5階建ての自社ビルにテナント入居者は皆無で、自分のミニシアターしか入っていない。わたしたちの舞台挨拶を聴きながらオーナーは泣いていた。身につまされ共感してくださったのだと思う。わたしに励ます言葉はない。根強いファンに支えられてはいるものの経営的には厳しい。いつ閉館になってもおかしくない。しかし、思うのだ。書店も映画館も同じ。本やスクリーンの感動に胸をふるわせ、人生に力や勇気をもらってきたことは間違いない。それは宝物である。胸をはって歩いていてほしいと心から願う。