からくり人形に学ぶ
⑤からくり人形に学ぶ
茶運びからくり人形を拝見する機会に恵まれました。からくり人形師、九代目玉屋庄兵衛作。大英博物館に展示されているものと同じものです。テレビなどでは何度も見たことがありますが、実際に見てみると、可愛らしさに目を細めてしまいます。
ご主人が茶托の上に湯飲みを乗せると、お客様のところまで運んでくれます。お客様が湯飲みを手に取るとピタッと止まり、お茶椀を置くと再び踵を返してご主人のところに戻ってゆきます。まさしくロボットです。
人形を特別に丸裸にして、中身の構造を見せていただきました。よく話題になるのが、ゼンマイ部分の材料です。セミクジラのひげを使っていましたが、絶滅種に指定されたため入手が困難になってしまいました。そのひげは弾力性があって、熱加工がし易く、なかなか他の素材では代替がかなわないそうです。
それ以外の部分は、すべて木製。江戸時代にはプラスチックはありませんからね。金属さえ一つも使われていないのです。車輪の部分はカリン、胴体はサクラと木の特性によって7種類の木が使われています。江戸時代から試行錯誤の上に最良の材質を探し出した結果だといいます。
あくまでも人形なので、顔が命。その顔や手足など衣装を身につけていない部分には、ヒノキが使われています。それも、木曾ヒノキと決まっているそうです。能面のように彫刻をするので彫りやすくなければなりません。そして、長く美しさを保つことが条件。そのために木曾ヒノキを7、8年も寝かせてから使うといいます。
制作期間は3、4ヶ月。聞きにくかったのですがお値段はというと・・・小型自動車一台分くらいとのこと。「ええ~」と思わず声を上げてしまいました。でも、きちんと手入れすれば200年も動くそうです。自動車はそうはいきませんよね。
200年は生きられないけれど、どちらを選ぶか腕組みして自問してしまいました。あなたはいかがですか。