リスたちに見習おう

③リスたちに見習おう

なんだか世の中がギスギスしています。人はすぐに効率だとかアウトソーシングだとか口にします。「余裕」とか「ゆとり」が、まるで仇のように。でも、その結果はどうでしょう。過日のJR西日本福知山線の脱線事故です。過密ダイヤや過度の労働条件が問題になりました。でも、そんなことはもう人々の記憶からは消えつつあります。
さて、自然観察員をしている友人から、こんな話を聞きました。リスの中には、冬に備えて木の実を木の根元に隠しておく種類がいるというのです。食料が不足すると、それをほじくりだして食べるためです。
ところが、ところが。
せっかく隠した場所を忘れてしまうリスもいるらしいのです。思わず、
「バカだねぇ」
と口にしてしまいました。同意を求めると、「志賀内さん、実は違うんですよ」
と真顔で言われてしまいました。それは、バ
カでも何でもなく、自然の偉大な法則に基づ
くものだというのです。
地中に埋められた木の実を、掘り返して食べたらそれでおしまいです。一度きりのことです。しかし、食べられずに土の中で生き残った木の実は、やがて春になると芽を出します。やがて、何十年もすると立派な木になります。するとまた、巡り巡って、リスに食料を提供ことになるのです。
もちろん、リスの寿命を考えると、土に埋めた当人には恩恵はいかないかもしれません。でも、そのリスの子供か孫かわかりませんが、間違いなくリスたち一族の食料になるわけです。
いや、もっと言えば、リスだけでなく、その森に住む木の実を食料とする生き物全体のためになります。一見バカに思える無駄な行為も、自然の摂理に従った循環なのです。それに引き換え人間のなんとおバカなことでしょう。今日も目先の利益を追いかけて・・・。