「赤福餅」の大ファンです!

②「赤福餅」の大ファンです!

お伊勢さんの名物に「赤福餅」があります。お餅をこし餡で包んだだけのシンプルな和菓子ですが、大好物で、ついつい一度に4つ5つはペロリと食べてしまいます。名前は「赤心慶福」に由来し、まごころを尽くそう、そうすることで素直に他人の幸せを喜ぶことができる(慶福)という意味だそうです。
さて、少し前のことです。この「赤福餅」に、異変が起きました。とは言っても、味が変わったわけではありません。いつものように紙包みを解いた瞬間に気づきました。箱の上に、お餅をすくって食べるためのヘラが付いているのですが、今までプラスチック製だったものが木製に変わっていたのです。
なんとも嬉しくなって、小躍りしてしまいました。別に、ヘラそのものを食べるわけではありませんが、木の温もりを感じたのです。口の中に運ぶ同じ道具でも、プラスチックは人工的な匂いがします。それに比べて、木だと唇や舌に触れても違和感というものがありません。
そこで、ふと思い出しました。数年前に、木曾屋柴蔵さんから聞いた話を。あるハンバーガーチェーンからこんな相談があったそうです。「コーヒーに付いているプラスチック製の細いタンブラーを木で作ってくれないか」というのです。何しろ、相手は巨大企業なので、なんと日産百万本の注文でした。大きな取引ゆえ欲もあったそうですが、何よりも環境問題に熱心なんだなぁ、と感心したそうです。
技術面の研究を重ね、ぎりぎりのコストダウンをはかりました。少しぐらい赤字でも地球のためだと腹をくくったといいます。でも、結局この話はご破算になってしまいました。先方の要望と価格に10倍以上もの開きがあったのです。
そこで、「赤福餅」です。きっと、たったヘラ一つでも、木製に切り替えるということは、大英断だったに違いないと想像できます。それだけ自らの利益を削ってまで、木にこだわられたのですね。木は活かして使えば循環できる地球に優しい資源です。
そうまでして地球のことを考えている「赤福餅」が、一層好きになってしまいました。