高野登さん「六本木にて」

「ザ・リッツ・カールトン・ホテルの

心に届く『おもてなし』」

 

          〇 高野登さんが、ザ・リッツ・カールトン・ホテルの日本支社長時代に、志賀内が編集長を務めていた月刊紙「プチ紳士からの手紙」に寄稿いただいたお話を紹介させていただきます。

 

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六本木にて・・・一通のサンキュー・メール

                 人とホスピタリティ研究所代表

                                  高野登

 

 

どうしてもリッツ・カールトンでの感動をお伝えしたくてメールをしています。

 

金曜日の真夜中過ぎの六本木。

私たちは、見るからに、

「飲みすぎて終電を逃した女たち」

「タクシー難民」

「ホテルまで行けばタクシーがいるかもと考えた浅はか者」

でした。

 

ひと目でホテルの宿泊客でも利用者でもないと判る私たちに対して、すぐに

「タクシーをお待ちですか?」

「何台ご利用ですか?」

「寒いですから中で座ってお待ちください」

と声を掛けてくださって、重厚感のあるドアを引いてくださいました。

 

実は私は、「ホテルまで行けばタクシーが・・・」と安易に考えて、最寄りのザ・リッツ・カールトン東京のタクシー乗り場を利用してしまったのは、あの晩が初めてではありません。

東京だけでなく、大阪で、シンガポールで、パリで、ニューヨークで。

 

たいがいのホテルで言われてしまうのが、

「こちらのホテルをご利用ですか?」

または、

「ご宿泊のお客様ですか?」

私がホテルの外側から歩いてきたことを確認したうえで、この言葉をおっしゃるのが一般的です。

 

この言葉を言わなかったのは、都心にある老舗ホテル一軒だけだったように記憶しています。だけど、その代わり何の言葉も掛けてはくれませんでした。

「タクシーをご利用ですか?」という言葉もなしでした。

 

そのホテルでは、やはり11月下旬だったのに、寒い中外で待たされました。

疲れている母に、「中で休んでいたらいいよ」という私。「タクシーを待たせたら悪いから」と気を使う母。

私たちのやり取りはそのホテルマンの耳にも入っていたと思います。

けれど何の言葉もかけてくれませんでした。

 

最終的には、「タクシーが参りました。」と、タクシーに乗せてくださったので、お礼をいってその場から去りました。

 

ですが!先日のリッツ・カールトンではとても温かいホスピタリティを頂きました。「サービス」などと言ってしまってはいけないような気がするほど、心も体も温まりました。

 

ホテルの現場にはたくさんのマニュアルがあるそうですね。

 

でもこういう「目の前の相手を思いやるひとこと」はマニュアルを超えたところからでてくるのだろうなと考えさせられた夜でした。