「やまとしぐさ」講座・「誰かのためにハンカチを忍ばせる」
辻中公の「やまとしぐさ」講座
「誰かのためにハンカチを忍ばせる」
幼い頃、忘れず携帯するように言われたものはハンカチとちり紙でした。
今の時代は、携帯電話です。忘れたら、家まで取りに帰るほどの必需品になっています。
しかしハンカチとちり紙は、なくても困らないと思っているのでよく忘れてしまいます。
子どものときは手を洗ってもスカートやズボンで拭きますし、大人でも、 大体のトイレには手拭きペーパーや乾燥温風器がついています。
レストランでは、 紙ナプキンやおしぼりがありますので困ることがありません。
私は和服を着るようになってからハンカチが必需品になりました。忘れたら家に取りに帰るか、途中で購入するほど必要と感じています。
私が着ているのは、ほとんどが母から受け継いだもの。大切なものなので汚さな いように気をつけます。食事のときには、こぼさずに食べられるものを選びます。
とはいえ、不意にこぼれることもあるので、必ずハンカチを膝にかけるようになり ました。
自分が汚さないようにするためでもあるのですが、大切な和服を守るために携帯するようになったのです。
その習慣が身につくと、洋服でも食事中にハンカチを膝にかけるようになりました。
また、スカートが短いときにもハンカチを膝にかけるようになったのです。それは、膝をむき出しにして、周囲の人が目のやり場に困らないようにするためです。
また、このご時世ですので手を拭いたり汗を拭いたり、咳やくしゃみをするときに口を覆うためにも、ハンカチは欠かせないものになりました。
衛生的に過ごす意味でもハンカチの必要性は見直されているのではないでしょうか。
知り合いに、いつもハンカチを二枚持っている女性がいます。そのうち一枚は自分が使い、もう一枚は誰かのために使うのです。
汗をかいている方がおられたら、そっと差し出します。
しかもそのハンカチは新品で、「よかったらお持ちください」と差し上げるのです。
ハンカチは、自分のために使うのはもちろんですが、この女性のように誰かのために使うことも大切だと思います。
そういえば私も子どもが幼いときは、手を拭くハンカチ、汗を拭うハンカチなど、子どものために何枚も携帯していました。
自分の持ち物に、誰かが使うためのものを忍ばせておく。
そんな心のゆとりを持てる、「美しい人」になりましょう。