「やまとしぐさ」講座・「神様に誓える」
辻中公の「やまとしぐさ」講座
「神様に誓える? 」
本来、人は母性愛の塊です。いつも明るく朗らかに、小さなことは気にしませんが、大切なことはしっかり伝えます。
ときに優しく、ときに厳しく、はっきり伝えるのです。
危険なときは危険といい、やってはいけないことに対してはダメといい、静かにするとき、騒いでよいとき、それぞれきちんと覚えさせ、行儀良くすることを教えます。
そして、その軸は人として正直であれ、ということ。
諸外国から「日本人は正直者」だと称賛されています。
トイレに携帯電話を忘れてもなくなりません。
道にお財布を落としても戻ってきます。
それは、普段から正直に生きることの大切さが習慣となっているからです。
結婚式では神前で三三九度をします。
みつ重ねの杯で、三回ずつ三献杯事をして、夫婦の契りを交わします。
これは一生添い遂げることを夫婦で、家同士で、神様と約束しているのです。
お正月には、お屠蘇を杯で三回に分けていただきます。国家安寧、家内安全、無病息災を神様と約束するためです。
「武士に二言はない」という言葉があるように、一度口にしたことは守ってきました。約束を簡単に破るのは卑怯なこととして生きてきたのです。
日本人が正直なのは、人同士や、自分自身、神様との約束を重んじる文化のお陰であり、その精神が様々な儀式の中にしっかり込められているからです。
そんな生き方を根付かせる、おまじないの言葉があります。それは「神様に誓える?」という言葉です。
小学生のとき、宿題を忘れた男の子がいました。その子は、教室ではいつもヤンチャで目立つ子です。
「せっかく宿題をやったのに、家に忘れてきた」と言うのです。 次の日も「宿題はやったのに、今日も家に忘れてきた」と言います。
三日目も「宿題を家に忘れてきた」と言いました。先生が男の子に聞きました。
「宿題をやったこと、神様に誓える?」
すると男の子は黙って下を向いていました。
それから「ごめんなさい。本当は宿題をしていませんでした」と謝ったのです。
先生は「正直でよろしい」と言って、男の子が倒れそうになるほど思いっきり頭をなでました。
それから男の子は宿題を忘れることがなくなったのです。
私たちは不思議です。「神様に誓える?」と聞かれると、正直になれます。
人には嘘をつけても、神様にはつけない。
そんな、おまじないの言葉を暮らしの中で復活させてください。