辻中公の「やまとしぐさ」講座「ハタキがけ」
皆さんは、掃除のときにハタキを使っていますか?
パタパタと壁や天井をはたく道具が「ハタキ」です。
え ハタキとは、塵や埃を払い落とすための道具で、細い竹などの柄の先端に、細かく裂いた絹布や和紙、羽毛などを束ねて結び付けてあるものです。柄の長さは、手 を伸ばし天井まで届くほどの長さですから、五十センチ程でしょうか。昔のお母さんたちは、毎日来る日も来る日も窓を開け放ち、豪快にパタパタ、とハタキをかけていました。
掃除は邪気を祓い清めるものと考えていましたので、このハタキは、塵を払いつ つその周辺に新しい空気を送り込み、換気とともに邪気のお祓いもしていたのです。 テレビの後ろ側、タンスの隙間など普段は空気が淀みやすい場所にハタキをかける と、空気がスッキリ晴れてきます。
そうやって、部屋や家の隅々にまで、新鮮な空気を送り込むことで、淀みなく浄化されますので、清々しい気持ちになれます。
以前は、ハタキをかけるたびに、埃が舞い上がっているだけのような気がしていたので、ハタキは使わず、拭き掃除だけをしていました。
しかし、隅々まで空気を送り込んで、祓い清めるという意味を知るようになってから、毎日ハタキがけをするようになりました。ハタキは上から順にかけます。天井、鴨居、壁、エアコンの上部、箪笥や食器棚の上、壁と家具の隙間、テレビの裏側など、隅々まで空気を循環させてから、掃除機をかけるとスッキリします。
掃除には順序があって、埃は上から払い、汚れは奥から掃き出します。埃を払うハタキをかけてから、ほうきや掃除機をかけます。それから拭き掃除をします。そうしないと汚れが広がりますので気をつけてください。
家具の裏側には、知らず知らずのうちに埃が溜まっていきます。換気のために窓を開けていると、風が室内にフワーと流れ込んで溜まった埃が部屋中に舞い上がってしまいます。また、エアコンをつけて風が起こるたびにも、溜まった埃が舞い上がります。だからこそ、こまめにハタキと掃除機をかけるようにするのです。
毎日、隅々まで拭き掃除をするのは大変ですが、ハタキがけなら毎日できます。
埃を溜めない秘訣は、気づいたらかけられるように、ハタキをすぐに出せるようにしておくことです。本棚や箪笥の裏に吊るしておくとすぐに取り出せて、毎日気楽 にパタパタできます。
私は、掃除をしていると無心になっていることに気づきます。何も考えていないというか、目の前のことにただ没頭しているのです。無我の境地というのでしょうか。部屋の掃除は、自分自身の邪気も祓われ、清められていくような気がします。 毎日、窓を開けてハタキをかけ、家の空気を新しくすることから一日を始めましょ う。外と内の循環をするのです。
そうすることで、昨日までの悩みや心の詰まりを取り払うことができます。
朝起きたら、まずは換気とハタキ。
昨日の穢れを祓ってから一日を始めましょう。