川に落ちた靴 (2006/12/16)

 豊川市にお住まいの今場安次さんからいただいたお便り。今場さんが庭木の手入れをしていると、奥さんが慌てて知らせにきた。「子どもが三人、川べりで泣いているよ」。これはただ事ではない、と家を飛び出してその場へ向かった。

 そこには、小学一年生ぐらいの男の子と双子の弟の三人がいて、泣いていた。「どうしたの」と声を掛けると兄の方が答えた。「弟がね、川に靴を落としたの。でも、僕には取れないの」と。事情を聴いて、まずは一安心。川底へ下りて靴を取ってやった。

 靴を渡すと、弟は「やったあ」と声を上げた。三人が声をそろえて大喜びで「ありがとう」。この瞬間、何ともいえないほのぼのとした幸せな気分になった。そして「おじさんの方こそお礼が言いたい」と「ほろほろ通信」にペンを執られたという。

 実は、気になることがあって今場さんに電話をした。お便りに八十一歳とあったからだ。川底へよくすっと下りられたな、と思ったからだ。電話の向こうの声はかくしゃくとしておられた。聞けば、ボランティアで子どもたちに剣道を教えておられるという。それも三十五年間。なるほど足腰にも自信があるはず、と納得。

 剣道を教えていると、こちらが教わることも多いという。今の子どもたちは理屈が先行する。たとえば「あいさつをしなさい」と言っても「なぜ」と聞く。でも、きちんと理由を説明すると素直に実践してくれる。子ども相手とはいえ、きちんと説明することの大切さを、学ばされたというのだ。

 今場さんが子どもたちに「ありがとう」と言われて至福のときを感じられたというのは、こうした長年の子どもたちとの交流があったからかもしれない。