いたわりの心持つ『ルク』 (2007/1/6)
よく「うちの犬は、しゃべれるのよ」という話を聞く。動物はどこまで人の心が分かるのだろう。豊田市の大学生川田達也さん(19)から、飼い犬のルクにまつわる話をいただいた。
ルクは病気にかかってしまい、動物病院に通っている。肝臓がん。ある日、治療の間に川田さんが待合室で座っていると、診察室から女性が泣きながら出てきた。「〇時〇分に亡くなったよ」と、愛犬の死を待合室のご主人に報告した。そばにいた川田さんは、気の毒で声を掛けることもできなかった。
その後、ルクの治療が終わって迎えに行った。痛い注射を何本も打たれたルク。いつもは、病院に来るだけでおびえて、川田さんにくっついて離れないはずなのに、その日は待合室の床に下ろすと、落ち込んでいるご夫婦のところまで行き「大丈夫ですか」と言わんばかりの表情で、すり寄ったではないか。まるで慰めるかのように。しばらくすると、ルクは「僕、慰めてきましたよ」といった顔つきで、川田さんの元に戻ってきた-その場の雰囲気から、川田さんにはそんな風に思えたというのだ。
川田さんが小学校二年のころ、校内に野良犬の子犬が迷い込んできた。子どもたちに傘の先で突かれたこともあった。放浪中にけんかにでも巻き込まれたか、耳が少し食いちぎられており、近づくとずいぶんくさかった。結局、縁あって川田さんの家で飼うことになった。それがルクだった。
そんな生い立ちのせいか、人の心がよく理解できるらしい。例えば、ルクのことではない別の話の折に「くさいなあ」と言うと、シュンと首を下げて向こうの方へ行ってしまう。
お便りは「最近、自殺などのニュースを見ながら、悩んだり落ち込んだりしている人に、周りの人が声を掛けてあげたら、きっと救われる人もいるのではないでしょうか」と結ばれていた。ルクのように。