優しさは人から人へ (2006/3/6)

 名古屋市名東区の藤原真由美さん(39)は、この正月休みに家族でグアムへ出掛けた。帰国の日、中部国際空港行きの便は日本国内の雪のために欠航。チケットが取れるまで、ホテルで待機することになった。

 ようやく手配できたのが、翌日の午前二時半に空港に集合し、午前四時半の出発という便だった。それも成田空港経由。藤原さんのお子さんはまだ六歳と八歳。大丈夫だろうかと不安になった。案の定、当日の空港ロビーは、便の乱れのため大勢の人でごった返していた。子どもたちも疲れで、ついには座り込んでしまった。

 ようやく搭乗時間がきて、機内に乗り込もうとしたとき気付いた。家族四人の席がばらばらだったのだ。「乗れるだけでも喜ぼう」と思ったが、子どもがぐずりはじめた。トイレや機内食のこともあり、せめて下の子とは隣り合わせの席にならないかと客室乗務員さんにお願いした。

 満席の状態。そして誰もが疲れきっている中、声を掛けてもなかなか応じていただける方が見つからなかった。そのときだ。窓際に並んで座っておられた母娘二人連れのお母さんが「どうかなさいましたか」と声を掛けてくださった。事情を話すと「私が替わりましょう」と言って、サッと立ち上がった。「でも…お嬢さんと離れてしまいますよ」とためらうと「うちもこの子が小さいころには、席を替わってもらいましたから」と。

 乗り込むまでの疲れと到着までの気苦労に気持ちがふさいでいた藤原さんは、うれしくて涙があふれてきた。「子どもが大きくなったら、今度は自分が子育てに四苦八苦している人を助けたい」と思ったという。お互いさまだから。