祖父母への手紙 (2007/3/25)

 名古屋市名東区の会社員祖父江誠子さんには、三人のお子さんがいる。その一番下の息子さんが、この春、高校を卒業した。彼は、戸籍上子どもということになっているが、実は祖父江さんの娘さんの子ども、つまり孫である。まだ一歳になる前に、やむをえぬ事情があって引き取ることになったのだという。

 本人も幼いころから理解していたそうで、そのことを誰にも隠さず暮らしてきた。ただ、どこにもあるような反抗期はあった。部屋が散らかっているのを注意すると、言い返してくる。学校を遅刻して心配させる。でも、厳しさも愛情だと信じてしかった。

 つい先日のこと。学校の国語表現という授業で作文を書いて、九十四点を取ったと言って帰ってきた。決して成績が良いとは言えない息子のことゆえ、驚いた。

 何げなしに置かれてあった作文を手に取り涙があふれてきた。それは……。

 「僕は、祖父母に育てられた。父も母もいないが少しも嫌だ、などと思ったことはない。祖父は心が広く優しくて理想の父親だ。祖母はときには厳しく、ときには優しい文句のつけようのない母親だ。尊敬している。その両親はまだ仕事をしている。僕のためだ。僕は、これから社会人として働くことになるが、今度は僕が両親を支える番だ。今まで苦労をかけた何倍もの恩返しをしようと思う」

 卒業前に、学校の担任の先生がわざわざ家に電話をかけてきて褒めてくれた。(学校は遅刻しても)ラーメン屋さんのアルバイトは、三年間、無遅刻無欠勤だったことを。実は、ただ今就職活動中。でも祖父江さんは心配していない。どんな仕事でもきちんとできるはずだと。恩返しはこの作文でもう十分。あとはすてきな女性を見つけて幸せな人生を送ってほしいと願っている。