『耳マーク』を知っていますか (2007/4/8)

 岡崎市の羽田野裕子さん(47)は、聴覚に障害がある。幼いころ薬の副作用で耳が聞こえなくなってしまった。そのため、つらい思いをしてこられた。たとえば、病院で診察の順番を待っているとき。看護師さんに名前を呼ばれても聞こえないので、何度も順番を飛ばされてしまったという。体がえらくて早く治療を受けたい場合には重大な問題だ。

 銀行や郵便局でも同じ。順番を飛ばされないように、自分のすぐ後に来た人をずっと見ながら待っている。その人が呼ばれたら自分が飛ばされたということだ。道を歩いているときも、車の音が聞こえないので神経をとがらせている。外出すると疲れ果ててしまう。

 さて、四年ほど前のこと。初めて入った地元の郵便局で、羽田野さんが胸に着けていた「耳マーク」=イラスト=のブローチに局員さんの一人が気付いてくれた。耳マークとは、耳が不自由だということを障害者自身がアピールするための表示だ。カードやシール、バッジなどさまざまなグッズがあり、「筆談してください」とか「耳が不自由です」などのメッセージが書いてある。

 その局員さんは、飛び切りの笑顔で目を見ながら筆談で対応してくださった。いつもならお金が関係する場所だけに、不安で胸が苦しくなるが、このときは緊張がほどけて幸せな気持ちになれた。これがきっかけとなり、自分と同じ境遇の人たちのために、「耳マーク」の普及活動に加わることになった。

 羽田野さんはおっしゃる。「私はまだいいです。大人になってから途中で耳が聞こえなくなった人は、なかなか対応できません」。まずは「耳マーク」の存在を知ってもらいたいと支援者らとともに学校や公共施設を駆け回る日々だ。おかげで、一部の金融機関や鉄道の窓口で「耳マーク」の表示が増えてきたという。名古屋が発祥とのこと。もっと広まれ! 耳マーク。