素晴らしき登山の出会い (2008/1/13)

 蒲郡市の市川葉子さん(67)は、登山を始めて十年余りになる。ご主人と妹、お孫さんの四人で奥三河の東海道自然歩道を歩いたときのこと。行程の途中でいったん林道へ出て、再び山道の降り口を捜したがわからなくなってしまった。困り果てて、近くで畑仕事をしていた四十代の女性に道を尋ねた。

 その女性もすぐに答えることができなかった。すると仕事をやめて、わざわざ車に乗って調べに行ってくれた。その上、ようやく見つかった降り口まで、市川さんたちを車に乗せて連れて行ってくれたという。「気をつけてね」と声をかけられて疲れも吹き飛んだ。

 岐阜の山に出掛けたときのこと。登山口までタクシーに乗ったが、林道の状態が悪くて途中で降ろされてしまった。そのため登山の計画が狂い、帰路は足が痛んで泣きたくなった。でも帰りの電車の時間もあり、急がねばならない。そこへ一台の車がやって来た。下山後に食事を予約していた民宿のご主人が、心配して迎えに来てくれたのだった。温かい気遣いに山菜料理も一層おいしく感じられた。

 昨年の八月、剣岳に向かう途中の出来事。米原駅から富山行きの夜行列車に乗るはずだった。ところが、新潟県中越沖地震のせいでその電車が運休になっていた。午前零時。帰りの電車さえなく立ち往生。そこで二人の駅員さんに救われた。始発で京都まで出て、大阪発の特急で富山まで行けることを教えてもらった。その時間まで駅の待合室を借りて仮眠をとった。

 「登山は自分の足だけでは登れません。登山の指導者、同行の友、山荘の方々、出会うすべての人たちに助けられて登頂できるのです」と市川さん。みんなに感謝しつつ、次の登山を計画している。