4代続く『ありがとう』 (2008/9/7)

 七月四日付「ほろほろ通信」では、小・中学生の皆さんに夏休みの宿題として、身の回りの「ありがとう探し」を提案した。大人からの報告も大歓迎と書いたところ、小牧市の小河原けさ江さん(58)からこんな話が届いた。

 小河原さんの八十一歳になる母親は、昔から「ありがとね」が口癖だったという。「あんたがいるから生きていけるんだよ。私の娘でありがとね」と。「ありがとね」は故郷の長野市の言葉だそうだ。つらい時こそ「ありがとね」と言う。今でも、実家を訪ねて枕を並べて寝ると「ありがとね」と口にする。

 八十五歳の父親も同じだ。その年代にしては珍しく、妻や子どもに対しても命令口調は使わない。何かものを頼む時でも「やっといてくれや」の後に「ありがとう」が付く。出兵した時、上官の暴力や暴言が目に余るものだった。そういう人にはなるまいと決めていたからだという。

 さて、母親はなぜ「ありがとね」が口癖になったのか。それは、祖母が同じように「ありがとね」と言っていたからだそうだ。気になり「お子さんたちはどうですか」と聞いてみた。二十歳を過ぎた二人のお子さんも、人並みに反抗期はあったが、洗濯やご飯の支度にも「ありがとう」と言ってくれていた。

 「感謝の心は、口にして初めて伝わるものだと思います」と小河原さん。ごく当たり前のことにでも感謝できる気持ちは、代々引き継がれている。