うつ病を乗り越えて (2009/5/3)

 豊橋市の大山正子さん(56)の次女は、小学五年生の時に自閉症と診断された。「どうしてこの娘が生まれて来たのか」と、誰一人相談する人もなく、毎日のように泣きながら暮らしていた。養護学校高等部の時には、病気で何日も学校を休んだ。二人だけの長い時間を過ごすうちに「この娘を殺して、私も死んでしまおう」とさえ何度も考えたという。

 苦労がたたって、大山さん自身もうつ病にかかってしまった。自分は悪いところばかりだと思いこみ、何もやる気が起きない。テレビを見たり、新聞を読む気力さえなく、一日中寝ているだけの生活。病状が悪化して三カ月の入院を余儀なくさせられた。

 ある日のこと、リハビリで塗り絵をした。すると、思わぬほど上手に描けたことに自分でも驚いた。

 それが自信につながり「前向きになろう」と思えるようになって、病気もほとんど回復。普通の生活を取り戻すことができた。

 大山さんはおっしゃる。

 「もし、次女が健常児だったなら、この世の中に知的障害で苦しんでいる人たちがいることさえ気づかずにいたでしょう。今では、この娘が私のところに生まれて来てくれたことにありがとう、と言えます。いつの日か、生んでくれてありがとう、と思ってくれると信じています。まだ心に余裕がありませんが、将来は同じような境遇の家庭のために、少しでも役に立てるようにボランティアをしたいと思っています」と。

 さらに「悩みがある人は、まず周りの人に相談してみてください。きっと道が開けます」とも。