あの子のために読んであげて (2009/8/16)
瀬戸市の相羽一代さん(50)は四年前から、地元の小学校で一、二年生の子どもたちに絵本の読み聞かせのボランティアをしている。週に一回、一時間目の授業が始まる前の十分間程度。それでも最初のうちは、ちゃんと席に座って聞くことさえできなかった。
ところが半年も過ぎると、人の話を聞く態度が変わってくる。先生方からも「落ち着いてその後の授業ができるようになりました」と感謝されるようになったという。今では、「今日は何の本?」「ちょーおもしろかった」「また来てね」と子どもたちから声がかかるようになった。
さて、ある日のこと。たまたま二週続いて、一年生の同じクラスで読むことになっていた。すっかりそのことを忘れてしまい、先週と同じ絵本を持って教室に来てしまった。「どうしよう」と担任の先生に相談していると、突然一人の女の子が相羽さんのすぐそばまで近寄ってきてこう言った。「この前、あの子とあの子が休んでいたの。二人のためにもう一度読んであげて。それに私、この話好きだし」
てっきり「間違えた」とブーイングが起こると思っていたので、驚いた。何より、病気で休んでいたクラスメートのことを思いやる優しい気持ちに心を打たれ、その小さな女の子が輝いて見えた。感激して泣き出しそうになるのをこらえながら、もう一度読んだ。相羽さんは「何か役に立てばと始めたことですが、こちらが幸せな気持ちにさせられています。上手に読めるわけではないけれど、これからも続けて行きたい」という。