配達途中の『こんにちは』 (2010/3/28)
豊田市藤岡飯野町の水野知美さん(40)は郵便配達の仕事をしている。すれ違う人や農作業をしている人に「こんにちは」とあいさつをする。すると「寒いのにごくろうさん」などと返ってくる。
聞けば、このあいさつは中学の時に身に付いたものだという。登下校時に先輩に会うと「おはようございます」「さようなら」と言う。卒業後も、道行く人にあいさつをするのが習慣になってしまった。田舎ということもあるが、仕事をしていない時でも誰かとすれ違えば「こんにちは」と口に出る。
ある土曜日のこと、配達の途中で向こうから中学生の女の子が歩いて来た。時刻は午前十一時より少し前。心の中で「こんにちは」か「おはよう」かどちらがいいかなと迷っていると、「こんにちは」と先に声をかけられてしまった。お株を奪われてしまった感じだ。それだけでもうれしかったのに、続けて笑顔で「頑張ってください」と言ってくれた。
実は水野さん、この仕事がつらくてたまらないことがある。自転車の前後にたくさんの郵便物を積む。重くて坂道では引いて上らなくてはならない。特に真夏は汗びっしょりで、帰宅すると疲れてそのまま眠ってしまうこともあるという。「いつまで続けられるかな」と思いつつ働いている。そんな矢先の言葉だけに元気をもらった。思わず「頑張るね」と返事をしてしまった。水野さんから藤岡中学の校長先生へ。「名前も知らない子ですが、とてもうれしかったです。これからもこういう生徒が増えるといいですね。私もその子を見習います」