内定取り消しを巡って (2010/7/25)

 一昨年の八月の話。春日井工業高校に通う工藤潤子さん(五三)の息子さんは、希望する電気関係の会社に内定が出て喜んでいた。その直後、リーマンショックが世界を襲う。十一月に突然、その会社から学校に「内定取り消し」の通知が入った。ほとんどの企業が採用募集を終わっている。途方に暮れた。

 翌日、工藤さんの家に担任の先生から電話があった。「学校側で一度相談してみます。少しお時間を下さい」とおっしゃった。そのすぐ次の日に、再び担任の先生から電話が入った。「いろいろありましたが、会社がもう一度考え直してくれ、再び内定を出してくれました」と。聞けば、校長先生が教育委員会や関係官庁の方々と連携を取り合い、会社に掛け合ってくださったらしい。

 手前みそになるが、息子さんは真面目だけが取りえなのだという。高校三年間、何があっても休まずに登校した。少々体調が悪くても学校へ行く。おかげで卒業時には皆勤賞をもらった。見ている人は見ていてくれるもの。きっと、先生方がその真面目ぶりを認めてくれて、会社に話をしてくれたにちがいない。「この子はきっと活躍してくれますよ」と。

 ところが多難は続く。入社後、ますます不況になった。週に三日しか働けず後は自宅待機。しかし、徐々に景気も回復し、最近では残業までするようになった。転職の話もあったが、本人が「この会社にいたい」と言い頑張った。工藤さんはおっしゃる。「学校の先生方、たった一人のためにありがとうございました。息子は今日も元気に通勤しています。」