動物を愛する人の輪が広がった (2010/10/10)
名古屋市昭和区の市川しのぶさん(66)の母親は大の猫好き。十匹くらいの世話をしていた。餌をやるだけではない。ご近所の迷惑にならないようにと、車庫に猫用のトイレを設置してしつけもしていた。なんと、それを野良猫たちも利用するようになった。
うわさを聞いてか、家の前に子猫を捨てていく人もいた。これを黙って引き取る。中には死んだ猫を玄関前に捨てていく心無い人まで。こちらはタクシーで火葬場まで運び供養した。すべて年金からのやりくりだった。
その母親が二年前、こんな遺言めいたことを口にして亡くなった。「私が死んだら猫のために何かしてやってほしい」。だが、市川さんの家族が猫アレルギーのため飼うことができない。「でも何かできないか」と考えていたある日のことだ。ニュース番組を見ていたら、野良猫の避妊手術の活動をするボランティア団体のことを紹介していた。「これなら私にもお手伝いできるかも」と思った。
しかしメモを取り損ねてしまった。テレビ局をはじめ保健所や動物病院にも照会したが、いずれも「わからない」という返事。あきらめかけていたとき、中日新聞の記事に目が留まった。岐阜市のある獣医師さんが、殺処分される犬や猫を希望者に譲渡を取り持つインターネットのサイトを作ったという話だ。すがる思いでその人に電話をすると、親身になりあちこちと手を尽くしてその団体を見つけてくれた。「おかげで母親の遺志を継げます。命を尊ぶ人の輪がつながってうれしいです。縁を紡いでくれた中日新聞と獣医師さん、ありがとう」