事故のおかげで幸せに (2010/12/12)

 安城市の神谷千代子さん(71)は、一年ほど前に事故に遭った。バイクで走っていたところを脇見運転の車に接触され、気が付くと病院のベッドにいた。後で聞いた話では、田んぼの中に落ちて救急車が駆けつけたときには意識不明だったという。右足の骨折。意識が戻っても「死んだほうがいい」とまで思い詰めるほどの頭痛に悩まされていたそうだ。それでも治療のかいあって三カ月半の入院の後、退院することができた。

 自宅に戻ったが、後遺症でバイクどころか自転車にも乗れない。頭を打ったせいで物忘れも激しくなり、右目の視力も弱くなった。外出もままならない神谷さんに、隣の家の奥さんが声をかけてくれる。「スーパー行く?」と。車に同乗させてもらい、食料や日用品の買い出しに出掛ける。そんな親切が心に染み「幸せだなあ」と思う。

 病院の先生に「まだ肩が痛むんです」と言うと「必ずよくなりますよ」と笑顔で励ましてくださる。またまた「幸せだなあ」と思う。それだけではない。月を見たり、夕焼けを見たりして「きれいだなあ」と思うだけで幸せな気持ちになれるという。目が見えるおかげ。毎日、新聞や本が読めることにも感謝している。

 実は、神谷さん。「以前は暗い性格でした」とおっしゃる。それが最近「明るくなったね」と友人たちから言われるという。どうも事故のおかげらしい。一命を取りとめたおかげで、すべてのことに感謝する心が芽生えたからに違いないという。今日も神様に「とても幸せです。ありがとうございます」と手を合わせている。