60歳の就職活動 (2011/5/8)

 春日井市の寺嶋みち子さん(60)は、昨年の10月に28年間勤めていた会社を定年退職した。いくらかの蓄えもあるが、それだけでは先が不安。働くことで世の中のためになりたいとも思い就職活動を始めた。

 ハローワークや就職情報誌で探した約30社に電話。何社か面接を受けたがすべて不採用。新卒さえ難しい時代、年齢だけで不利になる。ある程度覚悟はしていたが、あらためて厳しい現状を思い知らされた。

 ある会社では「60過ぎたら明日病気になるかもしれない」と言われた。健康には自信があるだけに悔しかった。「失業保険を受給していた方が収入が多いんじゃないですか」と言う採用担当者もいた。働きたくて面接を受けに来ているのに。第一、失業保険は短期間だけのことだ。心無い言葉に傷ついた。

 ある日のこと。内科の診療所が看護助手を募集していることを知った。寺嶋さんは以前経験があったので電話をしてみた。すると「決まりかけている方がいます。でも、念のため履歴をお聞かせください」と言われた。声の感じでは若い女性だったが、その丁寧さがうれしかった。さらに「院長に相談して後日連絡します。今回はご希望に沿えないかもしれませんが、そのときは申し訳ありません」と。数日後、電話があった。「今回は残念でしたが、もし欠員が出たときにはお願いします。まだ60歳なら働いていただけますね」。落ち込んでいた時だけに勇気をもらったという。寺嶋さんはおっしゃる。「今、就職活動をしているすべての人に光が当たりますように」