ありがとうカード(2006/5/18)
賛否両論はあると思うが、子どもは褒められて伸びるものだと信じている。それを教育の現場で実践している方に出会った。刈谷市刈谷南中学校の神谷和宏先生。先生は名刺サイズの「ありがとうカード」なるものを作っておられる。
いつも掃除をきちんとしている生徒がいる。ポケットからカードを取り出して「一生懸命にやってくれてありがとう」とサラサラッと書いて手渡す。あるときには「先生が両手に教材がいっぱいのときに、教室の戸を開けてくれてありがとう」。いずれも生徒の名前を添える。
生徒はカードをもらうと当然喜ぶ。目立たないことを認めてもらったと、きっと感じるのだろう。なかには、先生にお礼の手紙を書いてくれる生徒もいるとか。「先生があのとき、優しく声をかけてくれてうれしかったよ」と。
こんな話もうかがった。ある日、給食に出たプリンが、廊下にべっとりと落ちていた。いたずらだと思ったが、先生はクラスの皆に「誰か一緒に掃除してくれないか」と呼びかけた。残念ながら誰の手も上がらなかった。仕方なく先生は一人で片付けて授業を始めた。
授業が終わると、一人の生徒がやってきた。神妙な顔つき。ポツリと言った。「ごめんなさい。僕がやりました」。先生はカードを手渡した。「えらいね。やったことはいけないけれど、名乗り出る勇気はえらい」と書いて。
褒めるのも大変だろうなぁ、と推測している。しかる勇気を持つのも難しいが、いつも生徒を見続けて、ちょっとした努力をすくい上げてやるのは、もっと難しい。