どんよくな人になるな
会う人ごとに、
「何かいい話はありませんか?」
と尋ねるのが口癖です。
レストランでも、タクシーに乗っても、どこでも「ちょっといい話」を探しています。
「こんないい話がある」「とてもステキな人がいるよ」と耳にすると、北海道から沖縄まで、どこでも飛んで行って取材します。
それを、今まで、新聞や雑誌の連載や、本にしてみなさんにお伝えしたきました。
企業で言うところの「ちょっといい話」は、お客様の心に響くサービスということになります。
いわゆるホスピタリティあふれる「おもてなし」です。
モスバーガー、セブン-イレブン・ジャパン、ケンタッキー・フライドチキン、JR東海、ホテル安比グランド、スターバックスコーヒー、目黒雅叙園や、全国各地のホテルやレストランなど数多くの企業の「ちょっといい話」を、紹介してきました。
そんな中、このところ立て続けに「とある企業」にまつわる「ちょっといい話」が耳に入ってきたのです。
その名は・・・ダスキンです。
誰もが知る、おそうじ道具のレンタルと、ミスタードーナツを二つ経営の柱とする会社です。
その創業者は、鈴木清一さんです。
すでに亡くなっておられるので、残念ながら私はお目にかかったことがありません。にもかかわらず、その鈴木氏の存在が、まるで目に見えるかのような瞬間があるのです。
それは、どんなときか・・・?
一つは、ダスキンやミスタードーナツの本社社員、さらにフランチャイズ加盟店の経営者やスタッフの方々と話をするときです。気軽にミスタードーナツを食べようとして、お店に入ったときにも、鈴木氏の姿がデジャブーのように見えることがあるのです。
それは、何か・・・・?
鈴木氏の創業者「理念」が、DNAが亡くなられ後も脈々と引き継がれている。それが、「おもてなし」の心となって、「見えて」しまうのです。
以前、よく講演を頼まれると、「ギブ・アンド・ギブ」の精神についてお話させていただきました。
ある時、会場から反論がありました。
「それじゃあ、自分は死ぬまで損するだけだし、貧乏になってしまう」
と。たしかに、見返りを期待せずに善行を施すのは、難しいものがあります。喋っている本人だって、なかなか実行できていません。
そんな時、ダスキンの創業者である鈴木清一氏の言葉をお借りすることにしています。
どんよくな人になるな
ぬけ目なく、損をしないように
上手に立ち回る人がある。
ところが、反対に
自分が損だ、とわかっていても
上手に立ち回れない人もいる。
それぞれの人柄である。
ただ長い人生で、本当に損をしないのは
どちらであろうか?
すくなくとも、どんよくな人は
世間から好かれない人である。
何度も繰り返します。
鈴木氏は、「得な道と、損な道があったら、迷わず損な道を歩いてきた」と言っています。そして、損をするどころか、一代で大企業を育てあげました。
どうしても、人は目の前の利益に心を動かされてしまいます。でも、見返りは、与えたその人から返ってくるとはかぎりません。まったく予期せぬ方向から、突然やってきたりします。それも、ずっと忘れていた頃に。
成功したい人、夢をかなえたい人、お金持ちになりたい人だけでなく、疲れたとき、辛いとき、悩んでいるとき、傷ついたときにもギブ・アンド・ギブは効果があります。この小さな冊子が、皆さんの明日からの活力なれば幸いです。
ダスキン、ミスタードーナツのエピソードをここに紹介させていだきます。
この中に、仕事や人生、家庭が上手くゆく秘訣があります。
多くの皆さんが幸せな人生を送れるためのお手本になればと願って。