建設業で本当にあった59の心温まる物語(その2) 

 今日は、日刊工業新聞社編集局編(降籏達生選)「建設業で本当にあった59の心温まる物語」から、建設業に就いている方々の「仕事」との出逢いのエピソードを紹介させていただきます。

あいつが帰ってきてくれた

     太田建設株式会社   黒沢 貢様(山形県)

 私は高校の土木工学科を卒業しました。その後24年間、土木工事一筋で仕事をしてきました。

 そんなある日のこと、初めて工事を担当してもらう協力業者さんが現場にやって来ました。その協力業者の若い作業員の一人が、なぜか気になっていました。

 その作業員さんは体格が良く、笑うと目が細くなる愛嬌のある顔をしていました。不思議に思いながらも、しばらく一緒に仕事をしていてようやく気づきました。体格と細い目が16年前に若くして亡くなった仲の良い高校の同級生に良く似ていたからです。かつてはその友人も私と同じ現場監督でした。

 まさかと思いながら、生まれたところやご両親の話を聞いているとなんと、その作業員さんは友人の一人息子だったことがわかりました。

「あいつが現場に帰ってきた」

 私は「私は君のお父さんと一番の友人だったんだよ。小さいころ、よく一緒に遊んだんだ。そして同じ現場監督をしていたんだ」と話しました。息子さんも驚き、そしてとても喜んでくれました。息子さんがお父さんの後を継いで、同じ建設業界で働いていることに感動さえ覚えました。約20年ぶりに息子さんを通して友人に会えたような気がして、建設業で働いていてよかったとつくづく思いました。

 これからも友人も分までがんばって、現場監督としてよい土木建設物を作り続けようと決意しました。                       

志賀内泰弘

建設業の仕事は3Kと言われ、ただでさえ人手不足の世の中で、人材が集まらなくて苦慮しています。

建設業とは「物作り」です。それも、とてつもなくでっかいビルや橋、道路を大勢手の人の力で作り上げます。まったく何もなかったゼロの状態から、為しどける成し遂げるわけですから、その達成感は素晴らしいものでしょう。

その達成に至るまで、そこで働く人たちの心を一つにする「連帯感」が、このお話のような「息子さんを通して友人に会えたような気がする」ことに繋がるに違いありません。

たいへんだけど、たいへんだからこそ、やりがいのある仕事です。

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