38分発!スターバックス

取材で名古屋から浜松へトンボ帰り。

東海道新幹線では、一時間に一本だけ、上下線とも「浜松」で停車する「ひかり号」があります。これわ逃すと大変です。

帰りも、それに間に合うようにと、取材先の社長さんが駅まで車で送ってくれました。

 

幸い道が空いていたおかけで、時間には余裕で着きました。

温かい物が飲みたかったのですが、自動販売機はすべてコールドです。

 

改札を抜けると、待合室にスターバックスの看板が見えました。

時計を見ます。

3時31分。

(どうしようなか)

と迷いました。なぜか。

スターバックスでは、コーヒーを入れてもらうのに、少々時間がかかるからです。

 

迷いつつも、レジの前に立ちました。

「すみません。5分でできますか」

2分あれば、ホームまで駆け上がれるな、という計算です。

 

すると、レジの女性が答えました。

「38分ですか?」

 一瞬、

「え!?」

と思いました。なぜ、その時間がわかるのかな。

考えてみれば、当たり前と言えば、当たり前。

駅の待合室にあるスターバックスです。

頭の中に、新幹線のダイヤが入っている。

そして、いつも時計を見ながら接客をしているのです。

 

「はい」

と答えると、

「大丈夫です」

と言われました。そして、それに続いた言葉が、

「車内でお召し上がりになれるように、紙の手提げにお入れしましょうか」

「はい、お願いします」

「あちらでお待ちください」

受け取りのカウンターの前にいると、思うよりも早く呼ばれました。

「抹茶ラテ ショートのお客様」

腕時計を見ると、3分しか経っていませんでした。

早い!

 

手提げの紙袋を受け取り、レジの前を通ると、

さきほどの女性店員さんが、ペコリとおじぎをして微笑みました。

「ありがとう!」

と言うと、笑顔が3倍になって返ってきました。

 

さて、新幹線に乗り、紙袋から飲み物を取り出します。

紙袋の底には、段ボールでこさえた「穴」があり、

スッポリとカップが入っていて倒れないような工夫が施してあります。

 

「ああ、美味しい」

一口飲んで、「おや」と思いました。

紙のカップにマジックで何か文字が書いてある。

数字です。

「38」という数字に○が打ってある。

 

「ああ、そうか!」

それは、38分発の「ひかり号」に乗られるお客様の注文ですから、

早く作って差し上げてくださいね。

というサインだったのです。

 

お客様は次々とやってきます。

レジの人が飲み物を作るわけではありません。

飲み物を作る人に指示をする。

 

正確に伝えるために、

「38」

と書いたのです。

店員さん同士の連携プレーですね。

スターバックスでは、マニュアルがないといいます。

それは、それぞれのお客様に満足していただくためです。

 

前リッツ・カールトン日本支社長で、

人とホスピタイティ研究所所長の高野登さんは、

こんなことを言っておられます。

 

「ホスピタリティとは、

100人のお客様のご要望に

100通りの方法で対応すること」

 

いつもより、一層美味しく感じられたのは言うまでもありません。 さすが、スターバックスです。