建設業の本当にあったいい話・・・コンビニに来店する解体職人さんの話

 建設業は3K(きつい、汚い、危険)と言われる不人気業種です。その上、容易に一人前になれる仕事ではありません。でも、そこで働く人々がいます。3Kと承知で「建設で働きたい」と言う若者もいます。そこには、他業種以上に「なぜ望んで、その仕事に就いたのか?」「辛い時、苦しい時、どうやって乗り越えて来たのか?」とドラマが潜んでいます。
 建設コンサルタントの降籏達生さんは、建設業に携わる人たちの「心温まるいい話」を長年にわたって募ってきました。その中から、紹介させていただきます。

                      志賀内泰弘
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「コンビニに来店する解体職人さん」

株式会社三幸工務店 東京支店
                 岡村 匡志  (東京都)

 私の娘はオフィス街のコンビニでアルバイトをしています。その娘から聞いた話です。

 「ある日、コンビニの裏にあるビルの解体工事が始まりました。事前に案内文が届いていたため覚悟はしていたものの、いざ始まってみると激しい騒音に悩まされました。お客様との会話が聞こえづらく、声を張り上げることが多くなりました。混み合う時間帯に互いの声が届きにくいために、「レジに時間がかかる」と不機嫌になるお客様も少なくありませんでした。

 ある日の昼時のことです。作業服姿の方が大勢来店しました。話の内容からどうやら解体工事の職人のようです。この人たちに非がないことは重々承知でしたが、被害を考えるとどうしても嫌悪感を持ちました。
職人たちは思い思いの弁当とペットボトルを手に取り、大声でしゃべりながらぞろぞろとレジに並びます。その大雑把で豪快な雰囲気が、またレジ対応を憂鬱にさせました。しかしその職人が会計を終えたときのこと。笑顔で、「ありがとう!」と私にお礼を告げてくれたのです。しかも全員が。

 次の日も、またその次の日も全く同じ職人たちが同じ時間に来店し、レジ後は決まって楽しげに、やはり「ありがとう!」とお礼を言ってくれました。コロナ禍のご時世で、最低限の会話すら嫌がる人もいる中で彼らの笑顔は輝いて見えました。私は誰がどのタバコを買うかまで覚えてしまいました。

それから数ヵ月、工事完了のお知らせが届いて職人たちは来なくなりました。私は誰の名前も知ることはありませんでしたが、また近くで工事が始まって知らない職人たちにレジを打つことを楽しみにしています。」

 娘が建設職人にいい印象を持ってくれたことがうれしく、そして誇らしく思いました。