「いい話のノート」より・・・パート9

 以前、本紙「心にビタミンいい話」で特集しました(株)ユタカファーマシーさんは、大阪・京都・滋賀・愛知などに195店舗のドラッグストアを展開しています。遠くのお宅まで配達したり、お子さんの手を引いて一緒に買い物をしてあげたり、車までお米や水など重い物を運んで差し上げるのが当たり前のハートフルなお店です。そんなドラッグユタカさんの社員やアルバイトさんたちが休憩時間に綴った「ちょっといい話ノート」から紹介させていただきます。今回は、その第9弾です。

(その1) 365店(滋賀県) Kさん

 レジの仕事をしていた時のことです。少し手の不自由なお客様が、買い物カゴを台に置き、財布から小銭を取り出そうとされました。そのお客様は、後ろに並んでいる四十代後半の男性に「待たせてしまう」と気にされたらしく、小銭を取り出すのを止めて、お札を渡そうとされました。

 それに気付いた後ろの男性が、声を掛けました。
「えーで、ゆっくりやったらいいやん」

 手の不自由なお客様は、恐縮しつつも、小銭を一つひとつ選んで渡してくださいました。レジが終わると、男性の方を向いて「すみません」と何度も頭を下げました。すると、

「気にせんとき。俺も、もーすぐやし」
豪快に笑いました。正直に言うと、少々イカツイ風貌のお客様でしたが、心の優しさが伝わってきました。人を見た眼で判断してはいけないと反省。とても、温かな気持ちになった日でした。

志賀内泰弘

実は、志賀内も、似たような体験をしたことがあります。新幹線の自動販売機でチケットを買った時のことです。ジャラジャラッと出て来たたくさんのお釣りを掴んで、小銭入れに入れようとして失敗。床にばらまいてしまったのです。後ろは何人もの人が並んでいます。焦りました。焦りました。すると、ますます上手く拾えない。その時です。すぐ後ろに並んでいたオジサンが「慌てんでもええがな。ゆっくり拾いなはれ」と言ってくれたのです。その一言で救われました。レジで並んでいて、前の人がモタモタしていると、ついついイラつくものです。「ゆっくり構えよう」と思いつつも、心の中で舌打ちしている自分がいます。人を責めると、いつか自分も反対の立場になります。「おたがいさま」の心を大切にしたいと、改めて思いました。

(その2)エリアマネージャー(滋賀県) Iさん

 JR湖西線の小野駅の下の道路は、琵琶湖が近いために車に轢かれてしまったカメをしばしば見かけます。この国道161号線は、そんなカメを避けてジグザクに走る車が多いため、渋滞にもなりがちです。ある日の通勤途中のことでした。私の前を走っていた車が、急にハザードランプを点滅させて、路肩に停車しました。ドライバーが車から飛び出してきて、カメを掴んだと思うと、ガードレールの外側に運び、再び乗り込みました。
ちょっと、ほっこりした瞬間でした。

志賀内泰弘

お見事!面倒ではあるけど、カメのためにも、後ろから来る車のためにも、誰かがやらなくてはならない。通勤のついついイライラしがちな時に、そんな心に余裕のある人って素晴らしい!

(その3)くずは店(大阪府) Kさん

 若いお母さんが、赤ちゃんを連れてお買い物に来店されました。とても暑い日で、途中で赤ちゃんがぐずり出してしまいました。いくらお母さんがあやしても、期限は悪くなる一方です。買い物を済ませて、レジに並んだ時には、店内に響き渡るほどの大声で泣いていました。

 お母さんは、周りの人に迷惑をかけていることで申し訳なさそうに頭を下げては、赤ちゃんをあやし続けました。
そのお母さんの様子を見て、他のお客様は責めるわけではなく、「気の毒」という感じで、レジの辺りは、なんともいたたまれない雰囲気になってしまいました。

 その時でした。お母さんの、すぐ後ろに並んでいた、ちょっと強面の年配の男性が、
「大丈夫、大丈夫。赤ちゃんは泣くのが仕事や、どんどん泣いたらええ」
と朗らかでいる私の次男は、ふと気づくと表に遊びに出掛けてしまいます。
「危ないから、外へ行っちゃだめよ」
と、お母さんに話し掛けたのです。それを聞いたお母さんも、周りの人たちも、フッと緊張が解けて和やかな雰囲気に変わりました。まだ、赤ちゃんは泣いています。でも、お母さんは、会計を済ませて周りの人たちに挨拶をして帰って行かれました。お客様同士の「思いやり」のある心温まる出来事でした。

志賀内泰弘

このエピソードは、今、見直されている「働き方」の根本に繋がる気がしました。子育て中の母親に、職場の人が声をかける。「仕事は任せとけ。早く帰らないと保育園間に合わないよ」。子供が熱を出したと言うハパに、「今日の接待、代わってやるから帰れ」とか。自分の周りの人への「気遣い」をし合うことが、住みよい社会を作ると信じたい。
「寛容」という言葉があります。心が広く、人の言動を受け入れること。他人の欠点を責めないこと。これは、日本人の美徳の一つでもあります。「寛容」たる心を、いつまでも大切にして行きたいと願うものです。