建設業で本当にあった心温まる物語4(その2)

 建設コンサルタントの降籏達生さんが、『建設業で本当にあった心温まる物語』の第四弾を発行されました。

 建設業従事者、建設業と関わりのあった方より実話に基づく『心温まる物語』を収集し、厳選してまとめた本です。

 思わずホロッとくる話が詰まっています。

 その中から、一つ「いい話」を紹介させていただきます。

どのような仕事にも、やりがいがある

     (北海道 TKさん)

 防水工事会社に新卒で入社間もなく、工事現場で職人さんに作業を教えてもらいながら防水について学ぶという研修の日々が始まりました。

 工事現場での作業が数週間経ち、慣れない作業や分からないことだらけで、心も体もクタクタになっていたときのことです。休憩中、親方さんと話す機会があり

「防水の仕事って人目につかないことが多いのですね。防水の仕事をしていると人に話しても、みんな知らないから伝わりにくいし、地味すぎてやりがいを感じられないから他の業種で働きたいと思うこともあります」

と、つい弱音を吐いてしまいました。すると、親方さんは声を荒げて言いました。

 「ばかやろう。地味で何が悪い。人から見える物を作る事がカッコいいとか、見えない物がカッコ悪いとかなんてないんだ。雨漏りしてしまうから、防水をしなければ人は住めないんだ。人から見えない部分が多くても重要な仕事なんだ。俺が防水すれば雨漏りはしない自信がある。それが、俺のやりがいだ。」

 そのとき、私は自分が勘違いをしていたことにハッと気付かされたのです。

 新入社員だったころから二十年経ち、今となっては

「自分が提案、管理、施工した防水は絶対雨漏りしない」

と言えることが、自分のやりがいになっています。あのころ、親方さんに言われた言葉があったからこそ、現在も防水工事の仕事を続けることができていると思うのです。

 その話をしてくれた親方さんが数年前に亡くなったと聞きました。

 「見えるから見えないからとか関係なく、どのような仕事でも誇りを持ち、その中でやりがいを見つけて頑張っていく。」

大切なことを教えてくれた親方に、心から感謝しています。

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 「見えるから見えないからとか関係なく、どのような仕事でも誇りを持つ」
この一言が、心にズシンと響きます。

 接客業の仕事は、目の前に相手がいます。
でも、製造や工事、事務の仕事は、人が相手ではありません。
人から、何をしているのか見えない仕事です。
それだけに、「手抜き」をするという誘惑に襲われます。

 そこで心に、仕事に対する「誇り」がしっかりとあれば、「やりがい」に繋がります。

そんな
当たり前のことのようだけど、
大切なことを伝えてくれる「親方」と巡り合えたら、
人生は変わることでしょう。
 
さて、
今回出版した第4弾は、「若者のチカラ」をコンセプトに57編を選出。
未来の建設業を担う若手技術者・技能者(職人)のエピソードを中心に集められています。

降籏さんは、
「多くの方々に、建設業に興味や関心を持ってもらい、
建設業に入ってきていただけることで、地震や洪水があっても被害を最小限に止められる
建設業であり続けたいと思っています」
と熱く語ります。

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