恐るべしスターバックス

 町で友人にバッタリ。少しお茶でもということになり、たまたま目の前のスターバックスに入りました。

 ところが、あいにく店内は混んでいて、座席はいっぱい。仕方なく立ち飲み用のテーブルで、近況報告をし合いました。でも、ちょっとのつもりが話が弾み、気が付くと30分も経っていました。

 そろそろ、と思ったところへ男性店員がやってきました。
「これサービスです」
と、ミニカップのコーヒーを二人分差し出す。
(え!?)

 なぜ、サービスしてくれるのだろう。友人と顔を見合わせて店員に訊きました。
「席が空かずに申し訳なくて・・・」
こちらは、話に夢中になり別に気にはしていませんでした。しかし、この店員はずっと気にかけていてくれたらしいのです。遠慮なく御馳走になりました。

 ここで、ふと疑問が湧きました。これは従業員のマニュアルなのだろうか。チェーン店のことです。本部の規約もあるでしょう。ミニカップとはいえ、いったい、どういう権限でコーヒーのお代わりをサービスできるのだろう。二人で、そんな話にまたまた話が弾みました。

 店を出る時、レジのところで先ほどの店員に訊いてみました。すると、
「スターバックスにはマニュアルというものが無いんです」
と答えてくれました。
「いつも、どうしたらお客様に快適にコーヒーを楽しんでいただけるか。それだけを考えています。特に当店では他のお店と違って客席が少ないので、どうしても立ったままお召し上がりになるお客様が出てしまいます。席の空き具合をみてご案内するようにしていますが、今日のように席の空かない場合は、せめてもの気持ちでお代わりをお持ちしているのです」

 さすが人気店です。ウリはコーヒーだけではありませんでした。コーヒーを飲むというのは、そもそも疲れた心と身体をホッとさせるためです。サービス業が見失いがちなツボをしっかり掴んでいます。急成長した理由の一端を垣間見た気がしました。

 マニュアルはサービスの一元化に役立ちます。しかし、それだけやっていればいい、という免罪符に陥りやすいのです。

 さて、もう一つ気になることがあって訊ねました。
「あなたはここの店長さんですか」
と。若い笑顔がハキハキとして答えました。
「いいえ、ただのバイトです」
再び思いました。恐るべしスターバックス。