新人タクシードライバーから学んだこと(その3)

~一つの道を究めれば、すべてに通じる~

 なぜ、新人ドライバーがそんな気遣いができるのか?
それが、つばめタクシー平田営業所の荒木さんに対する疑問でした。その答えは、前の仕事の半導体製造関連の会社での経験にありました。

人との「関わり」から学んだこと

 具体的には、半導体を製造するラインを納入する仕事をしておられました。ただ設置すればいいということではありません。ちょっとでもラインが停止すると、生産計画が大幅に狂ってしまい、莫大な損失を与えることになってしまいます。荒木さんは、トラブルが発生した際にクレームを受ける仕事に携わっていたのです。

相手先は、誰もが知る大手企業の担当者。猛烈に怒られます。頭を下げても、なかなか怒りは収まりません。でも、けっして、その相手を嫌いになったりしたことは、一度もないといいます。反対に「好きになる」努力をしたそうです。
「え?!・・・そんなことできるんですか?」
思わず聞き返してしまいました。
「はい、もちろん、相手が起こっている最中は無理です。とにかく話を聞く。でも、長い時間、聞いていると、ふっと表情が緩む瞬間があるのです。口調が変わる瞬間。その時がチャンス!それまで神妙な顔で聞いていたけれど、笑顔で飛び込むんです。相手の懐に。すると、『ずいぶん、ひどいことを言ったけれど、君もたいへんな仕事だなぁ』などと、心を開いて赦していただけるのです」
実は、「物作り」の仕事ではあったけれど、人と関わる多くの経験をしてきた。その人との「関わり」で学んだことが、業種は違ってもタクシーの仕事で活かせるのではないかと思ったというのです。

 私の友人で、元・ホテルマンから生命保険のセールスマンになった人がいます。美容師から葬儀会社へ。学校の教師から建設会社へ、転職した友人もいます。
 いずれも、まったく異なる世界ですが、共通することが一つ。前職で「一流」と人から言われ、その世界のトップランナーだったことです。

 そうなのです。一つの世界で道を究めると、「やること」は違っても、他の世界でも成功する。なぜなら、ほとんどの仕事は、「人」が相手だからです。人との関わり、人に対する「おもいやり」の深い人は、何をしても上手くゆくのですね。
 タクシードライバー・荒木さんは、ますます、その道を究められることと思います。