名鉄タクシー №1ドライバーに聴く(その3)

「すべての仕事の通ずる成功のコツ」

  古川さんに、若い人たちへのアドバイスをお願いしました。タクシーに限らず、すべての仕事(いや人生全般)に通じることです。ここに、いくつか列記させていただきます

【頑張ったのに成果がでないのは考えて行動していないから】

 頑張っているけど、上手くいかない人がいます。例えば、就職試験でたくさんエントリーするのに一つも受からない。それは「頑張り方、頑張る方向が間違っている」のです。
どのタクシー運転手も頑張っている。でも、結果が伴わない人は、ただ闇雲に走っている人が多い。問題は、街を流すにしても、常にコースを考えることが大切。まずは「町の景色」を眺めてみます。そして、「空気」を感じる。すると、歩行者の「流れ」が見えてくる。その時、自分が歩行者の立場に立って考えてみる。「あそこの角を曲がったら、きっと買い物帰りの人が立っているに違いない」ということがわかるのです。

 もちろん、それは季節や時間帯によって変わります。今までの経験の記憶も総動員する。「あの時、ここの角でお客様を乗せたな」と思いだし、右へ曲がる。すると、やっぱり同じ人が立っていたということもあるのです。

【一番大切なのは「やる気」と「プラス思考」】

 人間は弱い生き物です。一口に「プラス思考」とは言うものの、ほっておくと知らぬ間に「マイナス」に心が傾いている。そんな時、すぐに「自分はできるんだ!」と言い聞かせ、心を切り替える。「マイナス、イコール、ブラスなんだ」というくらいに思い込む。建築の仕事をしていた時にも、失敗はありました。くよくよしていても、元には戻らない。すぐに「いいや、今度は失敗しないようにやろう」と瞬間にプラスに切り替える。その建築の仕事を失った時ですら、「あ、また別の仕事ができて嬉しいな」と思いました。

 心が暗くなると、顔に出ます。500円のお客様だとわかった瞬間、「またコロか」と思ってしまったら、仕事のやる気が落ちます。きっと顔にも出るでしょう。そんな時こそ「ありがとう」と明るくするのです。

【させていただいているという感謝の気持ちを持つ】

 タクシー運転手の中には、お客様に対して「乗せてやっている」と思っている人がいます。それが大間違い。「乗せてやっている」のではない、「乗っていただいている」のです。近距離とわかると、「歩いていったら」などと言う運転手もいると耳にしました。とんでもないことです。「近くてごめんね」と気遣って下さるお客様もいます。そんな時には、「いいえ、近いのは大歓迎です」と言う。感謝の気持ちで仕事をすることは、すべての仕事に共通することです。

【褒めて伸ばす】

 10名の部下がいますが、成績が芳しくなくても、けっして怒ったりけなしたりはしません。とにかく褒める。でも、根拠なく、漠然と褒めても心には響きません。
部下が営業から戻ってくると、「今日もダメでした~4万円しかできなくて」と言う。「どれ日報を見せてみろ」と、その日のお客様の数字を一つひとつ確認します。その中に、一つだけ「1万円」という数字が目に付く。「お!これスゴイじゃん。どうしたんだ」と尋ねます。すると弾んだ声で、「ええ、〇〇町から乗せたお客様が高速で△△ので行ってくれって」と答える。「おお、そうか、よかったな。スゴイじゃん」と褒める。ここですかさず、「名刺ちゃんと渡したか」と訊く。「はい」「電話がかかって来たらいいな~」「はい」ということで、元気を与えられると言うのです。
つまり、「いいところ探し」をするということですね。

【プラス思考の仲間に入る】

 ダメな人は、ダメな人たちのグループに入っています。ダメな人たちは「そんなに頑張ってどうするんだ」と、デキる人たちを小バカにして何もしないでサボっている。「コロばっかりだ」と愚痴を言う人の中にいては、いつまで経っても成績は上がらない。思い切ってデキる人たちのグループと話をする。デキる人は必ずアドバイスをしてくれる。たったそれだけで、自分が変るのです。
 最後にもう一つ、こんな簡単な方法を紹介しましょう。

【第一印象が大切】

 タクシーの仕事は、短い時間でどれだけお客様から信頼を得られるかが勝負です。そのために、古川さんはちょっとオシャレな伊達メガネをはめています。メガネをはずして「どうですか?イメージが違うでしょ」言われました。確かに・・・。メガネをはずすと、失礼ながら田舎で農作業をしているオジサンという感じに見えます。ところが再びメガネをかけると、なんとホテルかレストランのマネージャーのよう。知的に見えるのです。

 やる気のある後輩の運転手にも伊達メガネをかけさせました。すると驚くべきことが起きました。月の売上が60万円から80万円に跳ね上がったのです。本人もびっくり。「お客様に名刺をくれないか」と言われるんですよと。そこで、自腹で作った名刺を配りまくったら90万円にまで増えたのです。

 なぜ、そんなことが起きるのか。相手のイメージが良くなるだけではありません。メガネは仮面。鏡で変身した自分を見ることで、心が変る、恥じらいがなくなり自信がつく。内向的な人でも、お客様と堂々と会話ができるようになるという効果があるのです。