「こころ便り」から①「氣働きの実践」
新宮運送の社長・木南一志さんから、毎月毎月、ニュースレターが届きます。
その名も「こころ便り」。
こころに響く、メッセージに毎回、多くの「気づき」と「学び」をいただいています。
その「こころ便り」の巻頭エッセイから、選りすぐりを紹介させていただきます。
「氣働きの実践」
木南一志
もう、暦は夏へと移っています。過ぎて行く時間の早さになんとも言えない思いだけが残っていきます。当社の今年度の行動指を『氣働きを実行しよう』としました。これまでは年度ごとの経営方針でしたが、より実践に近づくために行動指針としました。
【氣働き】ことのなりゆきに応じて即座に心のはたらくこと。気の利くこと。気転。
[広辞苑]
ザーレンオイルのクイック経営研究会で金沢に行ってきました。研修の企画をしていただいたナカノ自動車の中野宏一社長、ザーレンの皆様、ありがとうございます。目的は、“本物のおもてなし”を見て、聞いて学ぶことでした。
サービスでは定評のある石川県和倉温泉の旅館、加賀屋さん。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において29年連続日本一だそうです。その加賀屋で長年客室係を勤めてこられた「長子(ながこ)さん」のお話を聞かせていただきました。子供の運動会にも弁当を届けただけで、参観日にもいくことができず、娘さんから罵られたこともあったと涙ながらに話してくださいました。苦労がにじみ出るようなお話にすばらしいサービスの原点を教わりました。その内容をちょっとご紹介します。
お出迎えも大切だが、お見送りの大切さにこだわった先代女将の実践。自分の子でもない私の子供を高校だけは出そうと懸命に説得してくれた女将。身だしなみや手抜きには、人一倍厳しく指導された。長子さんは、自分がこの客室の経営者だと思って取り仕切ってきたという。社長や女将さんは一人ひとりのお客様のお世話をすることはできない。だから、自分は経営者だと。仕事が好きでなければ、良い仕事はできない。嫌なことをいわれたら、余計に笑顔で敏速に対応する。できないサービスもある。けれど、その場で断らずに、別の方法を考えてみる。サービスは商品、単純な同じことを続けてするから自信がつく。マニュアルは誰にでもできる最低のこと。+α(プラスアルファ)が大切。などなど、ヒントは山ほどありました。
なかでも、お客様にお茶を淹れている時の何気ない会話から、還暦のお祝いや亡くなったご家族のことを知り、お祝いのお花や陰膳(かげぜん)をサービスすることなどは、よほど氣にかけていないとできないことです。
人間として一番大切なことを、自分の仕事のなかで氣づくことができるとしたなら、人生は豊かになり、笑顔は光り輝くものとなるでしょう。長子さんにとって、厳しくも優しい先代の女将がそのきっかけを作ってくれたのでしょうが、実行し、継続してきたのは本人です。たくさんのお客様に感謝され、豊かな人生を楽しく歩んでこられたお話に私の心も豊かになりました。
同じ仕事をしても、あなたにお願いしたいといってもらえるような仕事をお互い残していきたいものです。そんな仕事はきっと世の中を明るくしていくに違いないのです。本物と呼べる素晴らしい仕事を刻んでいきましょう。