「こころ便り」から⑭「0+0= 」

      木南一志

 暑中お見舞い申し上げます。節電の夏本番はこれからも続きます。体の調子を考えながら、早め早めの対応をしていきましょう。クーラーをまったく使わないことが素晴らしいことではありません。熱中症で倒れてしまったら、周りの人も大きな迷惑をこうむり、節電どころではなくなってしまうのです。水分を採る、適当に休む、体を冷やすなど出来ることはたくさんあります。自分だけは大丈夫と考えないで、休憩を早めにとる勇気を持って行動していきましょう。

 新人社員との懇談会を開催したなかで、0+0の話をしました。これはどこまで言っても答えは「0」のはずです。しかし、仕事に置き換えてみると、0の仕事をずっと続けていくと突然「5」になることがあるのです。数字の上での計算ではあり得ないことですが、人間の仕事では起こり得ることなのです。

 では、0の仕事とはどういうものでしょう? 例えば、朝の挨拶、笑顔、ちょっとした世間話なども含まれるかもしれません。担当している自分の仕事の中で売上に直接つながらないことです。もしかすると、上司によってはそんなことはしなくていいと指導しているのかもしれません。決して、それをやったからどうなるわけでもありません。しかし、ちょっとした0の行動を続けていくことによって、突然に結果が生まれはじめるのです。但し、それを信じない人には結果は訪れてくれません。

 一見、無駄と思われるようなことを真剣に続けていくとその人の個性が光りはじめるのです。現代社会は、大手企業のムリ、ムダ、ムラの改善活動がすべてのように勘違いして、人間として大切なものを棄ててきてしまいました。今回の大震災が起きて、その大切さを多くの国民が思い出したはずです。「思いやり」や「感謝すること」は、ムダではないのです。それがあるからこそ、仕事が生まれ、深まっていくのです。

 大企業が海外へ出て行くという行動がマスコミに取り上げられています。日本の国だからこそ出来ることがあることを忘れないでもらいたいと思います。もう一度しっかりと人間国宝に匹敵する職人を生み出していく社会にしていきたいものです。そのためには、私たちの今、担当している仕事のなかで何の儲けにもならないことに自分なりの意味を見出すことです。そして、その意味のあることを真摯に続けていくこと。たとえそれが0の数字であったとしても、続けていく中で生まれてくるものがあるのです。0+0=5という答えを導き出したとき、「あなたらしさ」が光り輝くはずです。

 お互い暑い中ですが、そんな「意味のある仕事」を重ねてまいりましょう。

 東日本大震災の地にこころ寄せて