「こころ便り」から⑨「備えよ常に」
木南一志
春になりました。幾度となく、迎える春ですが、今年は雪が多かったこともあって、待ち遠しかった人も多いのではないでしょうか。一気に緑がふえ、花が咲き、鳥がさえずりはじめました。人間だけではなく、大自然は春とともに始まるような感じがします。
桜の開花は、寒の入りのころにもう決まっているそうで、今年の春の準備はすでに冬へ入ったときにできているのだそうです。
次の準備ができているかどうか、これは仕事の上でも同じことが言えます。ひとつのことを仕上げていくのに多くの手が必要になります。
運送の仕事に置き換えると、まず、お客様から「どの製品を、いつ、どこへ、どれだけ」を運ぶか注文をいただき、トラックの手配をします。トラックの乗務員は、製品に見合う保護資材や道具を準備してお客様先で製品を積みます。そして、安全に、確実に、丁寧に運ぶということです。小さなことですが、電話を受けるときのメモ用紙ひとつとっても大事な準備なのです。
仕事をより良いものに仕上げていくには、相当の準備ができていないと良い仕事にはなりません。雨が降れば傘をさすことは、誰もが知っています。しかし、つい置きっ放しにしたり、車に積んだままにしたりということも多いのではないでしょうか。実際に雨が降り始めたときに、傘が無ければ使いものにならないのです。雨が降るだろうという予測の上での準備が必要なのです。
「そなえよつねに」という言葉は、ボーイスカウトのモットーです。少年時代に私はこの言葉に出会い、多くの教えをもらうことができました。もし・・・と考えたとき、準備ができている人とそうでない人とは雲泥の差、天国と地獄です。そして、何よりそういう習慣ができることで、知恵が働くようになるのです。小さな準備を怠らない。これだけでも実行できたなら、あなたの仕事はずいぶんと変わってくることでしょう。
神様は準備をたくさんした人に微笑むといわれます。チャンスは、待っていてもやってきません。かといって、むやみに走り回っても、得られるものではないのです。今できる準備をしっかりと実行すること。その実行の中から、工夫が生まれます。工夫する案がひとつも浮かばないとしたら、「準備の準備」ができていないのです。
「準備の準備」とは、ネジを締める作業にマイナスドライバーを使うとしたら、そのドライバーを普段からしっかり手入れしてやるということです。道具を大切にすることが、ネジを締めるための「準備の準備」なのです。準備を次々たどっていくことで、何が大切なのかということに気づかされます。花が一片(ひとひら)、咲くためにも多くの準備がなされてはじめて咲くのだと心から思えたとき、納得できるはずです。
自分の仕事を手抜きにするか、本氣にするかで、咲くか咲かないかが決まります。きれいな自分だけの花を咲かせましょう。
新しい年度もどうぞよろしくお願いいたします。