「こころ便り」から⑤「人のために」

      木南一志

 暦は、まもなく立春。三寒四温、春が待ち遠しくなります。政権交代しても、政治は変わらず、悪くなる一方です。JAL日本航空が二兆三千億円の負債で倒産しました。先日、映画「沈まぬ太陽」を観て、ひと昔以上前の親方日の丸の世界と権利ばかりを主張する組合活動の情けなさを感じたのですが、昭和60年8月、御巣鷹山に墜落した123便の現実はそれ以降もずっと続いていたのです。ふくらみに膨らんだ結果、シンガポールの国家予算に匹敵する負債を出し、それを税金で穴埋めして、再建するという計画に私は疑問を持ちます。

 仕事は自分の生活のためではありますが、その目的はひと様のお役に立つということが第一になくてはなりません。自分のためだけに権利を主張する現代の風潮は、大きく道を間違えることにつながります。なぜなら、どんな仕事も本当は自分以外の人の役に立つことで存在しているからなのです。お役に立つことが形を変えて、金銭というモノサシで生活を支えているのです。労働条件を良くしていこうという労働組合のかけ声に私は大賛成です。しかし、自分のことしか考えない姿勢で取り組んでいったとしたら、早晩その会社は必ず潰れます。条件改善のためではなく、つぶすために組合活動をしたようなものです。

 生きていくためには、他の動物や植物の命をいただかなくてはなりません。本当に地球環境を良くしたいと願うなら、人類をこの地球から追い出してしまうことになるのです。このように世の中の現実は、矛盾しながら存在しています。

 自分達のことだけを考えて進んできたから、その会社は必要ないという結果になるのであって、売り上げが少ないから、利益率が低いからということではないのです。

 社員一人ひとりが必要とされる仕事を実行できていたなら、お客様は必ず認めてくださるのです。自分達の境遇を嘆いてばかりいずに、感謝されることをひとつでも実行できる人になりたいものです。たとえお客様でなくても、車で走っているときや歩道のすれ違いのときに、道を譲ってあげることだけでも、きっと回りまわって、どこからか認めてくれる人が現れます。反対に自分さえよければと、人にぶつかっても謝りもしない、さっさと進め!とばかりにクラクションを鳴らす行動を続けていると、きっとうまくいかないことが増えてきて、いつもツイテない!とぼやくばかりの人生を歩むこととなるでしょう。

 仕事を通じて、自分の人生を豊かにすることができる唯一の方法は、人のために行動することです。そして、喜んでいただくことなのです。その実行が継続されたとき、はじめて実感することができます。最初から答えを求めていると、いつまでたっても答を得ることはできません。自分の仕事を通じて社会のお役に立てる人でありたいものです。

 もう少し時が経てば、今年も春は必ずやってきます。にこやかな人生の春は、自分自身の実行からでしか生まれてこないのです。ツイテいないのは、自分自身が原因を作っているのだと知りましょう。