第8回 セカンドオピニオン探し

医療コーディネーター・I先生との出会い

A総合病院のM先生が信用できない。医者は患者に寄り添うものではなのか。まるでロボットのように無感情で憤懣やるせない(AIが進化しロボットでも愛想がある)。とはいっても甲教授に無理を言っての紹介だ。話し方が「冷たい」という理由で他に替わるわけにいかない。だが、セカンドオピニオンを取りたかった。どこへ行ったらいいのか。現時点で「手遅れ」なのだ。これから情報を集め、2つ、3つと病院を回っていたら、ますます進行してしまう。

そんな時、友人の紹介で薬剤師のIさんと会う約束があった。いくら気を張っても落ち込んでしまう。先方の事務所で対面して早々、弱音を吐いた。「実は参ってます。今日キャンセルしようかと思ったほどで」「どうされましたか?」と聞かれ、胸の内の苦しみを吐き出した。ここで初めて知った。ただの薬剤師と思っていた目前の人のもう一つの顔が、がん患者の相談を受ける医療コーディネーターだったということを。

「現在50人くらいの患者さんの相談に乗っています。京都大学医学部の付属病院や、大阪、東京などの最先端医療を行う病院の医師に知り合いがいて、最も有効で適した治療が行えるようにアドバイスしています。A総合病院でデータをもらって来てください。それを何人かの優れた医師に診てもらいます」

私は特別の宗教を信仰しているわけではない。だが、これぞ神の思し召しかと思った。一度に何人もの医師の見解を聞けるとは、なんと有難いことか。聞けば、人脈を生かしてのボランティアに近い活動であり、他に同じようなことをしている人はいないらしい。「がんがどんなに大きくても、そのまま長生きしている人もいます。いろいろな治療方法を組み合わせて治す方法を提案させていただきますね。でも、治療方法には副作用などメリットデメリットがありますからそれぞれ説明しましょう。実は、私の妻も数年前に卵巣がんに罹りました。その時、子供が幼くて私もどうしようかと落ち込みました。でも今日も生きています。私の相談者50人も全員生きています。大丈夫!希望を持って行きましょう!!」

さっきまで「死ぬ気」でいたカミさんの顔つきが変わった。「私、なんだか死なない気がしてきた。I先生にお任せしようと思う」。まさしく医は仁術。言葉一つで、生きる気力を湧かすことができる。