第23回 代替治療の賛否について

中国鍼治療のおかげで、抗がん剤治療を続けることができた。カボチャのようにボコボコのオッパイが、みるみる小さくなりペチャンコになった。さらに周囲にやわらかな肉が盛り上がってきた。腫瘍マーカーは正常値の範囲内になり安定。A総合病院のM先生からは、抗がん剤が効くのは6~8か月程度と聞いていた。それが過ぎても効き続け、ほぼ日常生活を取り戻し泊りがけで旅行にも行けるようになった。大好きな料理、洋裁、ピアノもできるようになった。

二年半が過ぎた平成25年10月。再び腫瘍マーカーが上昇し、ホルモン療法(フェマーラ)に切り替えた。この際にも「ホルモン療法はがんを消滅させる力はなく、生成を遅くして防衛するだけです。効き目は6か月程度」と言われたが、それから再び二年半もの間、がんは大人しくしていてくれた。M先生はこの間、こんなこと言っていた。「不思議だ。普通は良くなるか悪くなるかだ。時が止まったよう。細胞が壊れて生成されて均衡を保っている。繊維質化しているのだろうか。こんなに効く人は珍しい。いや他にいない」

実は、茶屋ヶ坂東洋医学研究院の項一雅子先生による鍼・漢方治療の話は、M先生には一切話をしていない。まだ抗がん剤治療を始めたばかりの頃のこと。M先生に「免疫療法はどうなんでしょうか?他にもいろいろ代替治療があるようなんですが…」と尋ねると「そんなものは効かない。やるなら、うちでは治療を続けられないので来なくていい」と言われた。二人しておののいた。ここで見捨てられたらどうしたらいいのかと。だが、ある時、点滴治療をしている際に、看護師さんに話し掛けられた。「何か他に治療はやってみえますか?」と。「いいえ」と答えると「みなさん、ここだけじゃなくて、いろいろやってみえるみたいですよ」と小声で言われたのだ。

陽子線治療、活性化自己免疫リンパ球療法、温熱療法などさまざまな代替治療を調べ、その病院まで訪ねたものもある。だが、結局は受けなかった。カミさんが「あれもこれもできん」と訴えたこともある。だが、何よりも「時間は後戻りできない」ということだ。A治療が効かないから次はB治療へといっても、その間に過ぎた時間は取り戻せない。同時に二つの治療を受けた場合、相性が悪くショック症状を起こしたり、悪化する可能性もある。治療の選択は常に右か左を迫られる。まるで博打だと思った。そんな中、項一先生との出会いは幸運としか言いようがない。